パノラマレントゲンから切り取り
左下6番(第1大臼歯)の歯根周囲が黒くなっています。骨が溶けている状態です。むし歯の所見はありません。考えられる原因は、1、ひび割れ、2、外傷 などの何らかの原因で根管が細菌感染したものと考えられます。
根管治療中です。根管の中が少し白く写っていますが根管治療薬の水酸化カルシウムです。
根管に膿などが認められなくなり、痛みが無くなれば防腐剤で根管を充填します。防腐剤はペースト状のものと固形状で棒状のものを使い根管を緊密に詰めます。歯根周囲の影が薄くなっているのは、骨吸収が改善されつつあることを意味します。
パノラマレントゲンから切り取り
1年後。歯根周囲の影は無くなって骨が回復しています。根管治療した歯は木に例えると枯れ木です。天然の生活歯と比べて折れやすくなったり割れやすくなったりするので金属冠で被せてあります。
歯根破折
歯牙透明標本
うえの写真は歯牙透明標本と言って抜いた歯の神経に墨汁を流し込み象牙質を透明にする処理をしたものです。
神経は大変複雑に分布しています。そしてこの神経は象牙質に水分や栄養分を補給しています。この神経に侵入したむし歯菌などを殺菌する作業が根管治療なのです。大変難しく時間がかかり歯医者も神経を使って治療します。
さて根管治療が済んで被せも済みました。万々歳なのですが、神経を取った歯は木に例えると枯れ木になったのです。折れやすく割れやすくなります。気を付けて咬みましょう。
私が診た30代の女性患者さん、甘いものが好きだったのか?ほとんどの歯が神経を取ってありました。2年間のうちに5~6本の歯が割れて次々に抜かざるを得なくなりました。大変つらかったです。「ああ、こうして取り外しの入れ歯になり、最後は総入れ歯になっていくんだな」と思った症例でした。
歯が痛くなって、穴が開いてから歯医者を受診するのでは根管治療、歯の破折、抜歯そして入れ歯への道を止めることはできません。痛くなくても定期的に歯医者受診することが結局は歯を守る近道なのです。定期検診をお勧めします。