甘いものを食べると虫歯になります。1番むし歯になるのは砂糖です。次が炭水化物です。タンパク質、脂質は虫歯になりません。具体的に言うとおやつの甘いお菓子が一番むし歯になります。
しかし、皆さん甘いお菓子を我慢できますか?イヤイヤ、歯磨きをちゃんとすればいいじゃないか、という声が聞こえてきますな。実は歯磨きってすごく難しいんですよ。
学生時代に90分間の歯磨き実習の講義がありました。実習が始まる前は皆でこんなつまらん講義よりもっとためになる講義があるよな、などと愚痴を言っていました。実習の内容は、昼ごはんの後いつも通りに歯を磨きます。磨き終えたら歯に染色液を塗ります。歯の噛む面の溝、歯と歯の間(歯間部)、歯の生え際(歯頚部)のむし歯になりやすい部分がどれだけ磨けているか調べます。80%磨けていれば素晴らしいあまりむし歯にならない、60%が一応合格という基準です。40人の学生でだれも合格しなかった。親が歯医者の学生が半分ぐらいいましたが全滅。私にいたっては19%でした。
講義を受けて歯磨きの練習をしました。ブラシの選択、当て方、動かし方、力の入れ方など、実習が終わるとみんな「素晴らしい実習だった」と感激していました。歯磨きがへたくそだったそんな私がなぜむし歯にならなかったのか?おやつをほとんど食べなかったし食べる時はいりこなどを食べて、甘いお菓子は食べていなかったからです。大学に入り、反動で甘いお菓子をいっぱい食べて虫歯になりました。
むし歯や歯周病の勉強が進むとその原因がわかり対処法がわかりました。原因と対処法がわかれば病気は根絶できるなどと甘い考えを持っていましたが、歯医者も必要ない時代が来る、次はどんな仕事をしようかなどと考えていたものです。しかし、甘いものの誘惑はすさまじく手を変え品を変え迫ってきます。残念ながらまだまだ私は歯医者として必要とされているようです。
コメディアンの植木等(もう亡くなられましたが)さんは、根は真面目な方で「すーだら節」を歌うことになった時、こんなふざけた歌を歌っていいんだろうかと悩み、お寺の住職をしていた父親に相談したそうです。父親はこの歌の歌詞を読んで、素晴らしい歌だから是非歌いなさいと後押しされたそうです。「判っちゃいるけどやめられない」本当にふざけた歌ですが名曲です。甘いものは食べるな、塩分控えろ、タバコは吸うな、酒飲むな、などと言われますがやっぱり飲んじゃうんですよね。それ以来「すーだら節」が大好きになりよく鼻歌交じりに歌っています。YouTubeで見れます。最高ですよ。
話を元に戻して、虫歯になると虫歯菌が神経に侵入してきてだんだん痛くなります。痛みを止めるために神経を取ります。(木に例えると枯れ木になりました)根管治療が済んで長持ちするように冠を被せます。(咬合面を部分的に詰めるものは欠け易い、咬合面をすべてカバーしたほうが欠けにくい)一件落着なのですが、実は時限爆弾を抱えているのです。それが歯根破折です。もしも死ぬまで持ったらラッキーと考えましょう。教訓:痛くなくても定期的に歯医者に行きましょう
50代 女性
主訴:噛むと痛い
診断:歯根破折
レントゲンの結果、左下5番が歯根破折を起こしています。6番欠損の5番7番支台の3本ブリッジです。5番は失活歯(神経を取ってある歯)で真っ二つに割れています。割れた歯根の間に白い糸のようなものが2本見えますが、根管の防腐剤です。
抜歯した5番は真っ二つでした。
2~3ヶ月経って抜歯した部分が治ったら、5番6番欠損、4番7番支台の4本ブリッジになります。4本分の力を2本の支台で支え2倍の力がかかることになるのであまり固いものは控えたほうがいいです。
むし歯がない生活歯(神経が生きている歯)が1番長持ちします。
以前30代の女性の患者さんを診ましたが、その方は甘いものが好きだったんでしょう、ほとんどの歯が失活歯でした。欠損部にインプラントを入れましたが、それから失活歯が次から次へと割れていきました。本当にいたたまれない気持ちになりました。私が診ている時だけでも5~6本歯根破折を起こして抜歯しました。
甘いものが好きな方は神経を取らない、その為にはむし歯にしない、その為には歯が痛くなくても歯医者に行く、定期的にクリーニングに行きましょう。