
食事に関して大変興味深い記事がありましたので紹介したいと思います。
私は歯医者なので、むし歯と歯周病についての食生活を患者さんに説明しています。むし歯と歯周病の原因は既に分かっています。むし歯は砂糖の食べ過ぎ、歯周病は柔らかいものの食べすぎです。砂糖を食べず、歯ごたえのあるものを食べれば歯医者に行く必要性は少なくなります。
しかし、日本に住んでいると、そのような生活は仙人にでもならない限りほとんど不可能です。そこで、我田引水ですが、われわれ歯科医を上手に活用していただくのが一番です。具体的には、定期的な歯科検診になります。痛くなってから受診すると、痛いし、受診回数が増えるし、費用も掛かります。定期健診では、それぞれの患者さんに合わせたアドバイス、治療を提供できます。
それでは、京都高雄病院の院長・江部先生の記事です。江部先生はご自身が糖尿病になり、糖質制限食を実行され、投薬なしで克服されています。糖尿病の患者さんにも糖質制限食を取り入れ、成果を上げておられます。
以下引用
人類の進化と食生活。農耕の問題点。EPA・DHAの不足。
2021年02月16日 (火)
こんにちは。現生人類(ホモ・サピエンス)誕生後に起こった最初の大きな歴史的変化は、組織的農耕の開始です。
ティグリス川とユーフラテス川の間の沖積平野であるメソポタミアは、現在のイラクの一部にあたり、小麦や大麦が自生していました。この肥沃な三日月地帯に属する地域で、小麦(あるいは大麦)の栽培が約12000年(或いは10000年)前から始まりました。アジアでは、約10000年ほど前、中国の長江流域で稲作を中心とした農耕が開始されたとされています。
農耕の発達により、単位面積当たりで養える人口は20倍~100倍に激増しました。
しかし「天才と分裂病の進化論」(デビット・ホロビン著、新潮社、2002年、金沢 泰子翻訳)によれば、水棲食物中心の食事から穀物中心への食事への変化は、少なくとも過渡期に人間に健康状態の悪化をもたらしました。
狩猟採集生活者の遺骸が見つかった場所で、農耕生活者の遺骸も見つかりました。そうした数多くの調査結果で、身長は数インチ低くなり、遺骨は変性疾患の痕跡を示していました。人口が少ない狩猟民族の頃は、魚や肉など動物性タンパク質をかなりの割合で摂取していたと考えられます。
組織的農耕が始まってからは、増えた人口を養うためには、穀物(糖質)中心の食生活とならざるを得ず、結果として動物性タンパク質の摂取不足が発生した可能性があります。
さらに穀物中心の食生活からは、正常な脳機能に必要なEPA・DHA(ω3系必須脂肪酸)の摂取が不足するため、脳の代謝に悪影響がでる可能性があります。
EPA・DHAは、穀物や野菜・果物・ナッツなど植物性食品にはほとんど含まれていません。一部の海草、苔、肉微小藻類には含まれています。肉微小藻類を食べる水棲小動物や地虫・水鳥・魚・は虫類・両生類・昆虫・肉・臓器・脳・骨髄などの動物性食品にEPA・DHAは含まれています。
さんまには、100gあたりDHAが1600mg、EPAが850mg含まれています。鯖は、それぞれ970mgと690mgです。あじやアナゴなど海の魚にもDHAとEPAは多く含まれています。
豚肉は100gあたりDHAが67mg、EPAが0mg含まれています鶏肉は、それぞれ16mg、と5mgです。牛肉は、それぞれ4mg、と20mgです。全卵は、DHAは0mg、EPAは120mg含まれています。
EPAとDHAの含有量に関しては、陸に対して海の圧勝ですね。精製炭水化物を中心に食事を摂取する文明国の統合失調症は、重症のことが多いのです。
例えば、精神疾患患者に対してドコサヘキサエン酸(DHA)やイコサペンタエン酸(EPA)を既存の精神疾患治療薬と共に投与すると症状緩和の増強効果が認められること、統合失調症では赤血球膜や死後脳で多価不飽和脂肪酸が低下していること、気分障害では血中のDHAやEPAが低い患者ほど自殺の危険性が増すことなどが知られています。
このように、脳機能におけるDHAやEPAの役割の大切さが立証されています。
ブログ読者の皆さん、DHA・EPAの確保のために
海の魚をしっかり食べましょう。
江部康二
以上引用終わり