今週のお知らせは、藤川徳美先生の著作「すべての不調は自分で治せる」についてお知らせします。
藤川先生は広島大学医学部を卒業され、廿日市市で心療内科を開業されています。その間、体調不良を糖質制限食で改善され、栄養の大切さを実感され栄養学を勉強されました。欧米のオーソモレキュラー栄養学と三石巌先生の分子栄養学を学ばれ発展させ診療に生かされています。
すべての不調は自分で治せる、その2
うつ・パニックは鉄不足が原因だった。
うつ・パニックのほとんどが低フェリチン(貯蔵鉄不足)
私が分子栄養学を学び、実践するモチベーションになったのは、女性のうつ病やパニック障害とみられる症状の多くは「鉄不足」によるものだということが、臨床的に確かめられたことです。鉄を投与すると、みるみる治っていきました。
月経のある年代の日本女性のほとんどが、鉄不足に陥っています。貧血の指標はヘモグロビン値ですが、これが基準値でも、体内で貯蔵されている鉄の量を表すフェリチン値が低いのです。一方男性においては鉄不足はまれですが、女性より鉄不足には極めて脆弱です。
鉄不足の症状は次の通りです。
海外では鉄不足の人が少ない理由
厚生労働省の日本人の鉄摂取量は、60年以上前の1950年から、約6分の1に減少しています。一方、先進国の中でも欧米の女性は、日本女性のような鉄不足に悩む人はほとんどいません。欧米では、鉄分を多く含む肉を日本人の3倍ほど食べますし、あらかじめ小麦粉に鉄を添加するなど、鉄不足対策が行われています。
血液の赤血球を合成するのが、鉄の役割の1つですが、鉄にはそれ以外にも、生命活動の根幹に関わる大切な役割があります。
鉄は神経伝達物質であるセロトニン、ドーパミン作成の際の因子です。うつ病が起こるのは神経伝達物質であるセロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンの減少が一因とされています。セロトニンは心を安定させ、ノルアドレナリンはやる気を作り、ドーパミンは快楽を作る作用に関わります。
鉄はこうした神経伝達物質を作る際に必要なのです。これらの神経伝達物質の不足がうつ病の原因であると言うものアミン仮説に対応した向精神薬もあります。また鉄は体内で発生する活性酸素を除去する役割もあります。さらに重要なのが、エネルギー代謝の最終段階に鉄が用いられることです。
ATPを増やす。エネルギー代謝の目的はATPを作ること。ATPは、生体内のエネルギーを貯蔵したり、供給したり、運搬を仲介したりするとても重要な物質です。体を動かすにも、頭を使うにも、呼吸をするにも、心臓を動かすにも、食物を消化吸収するにも、各種ホルモンを合成するにも、もちろん、タンパク質を合成するためにも、ATPが必要です。
ATPはどのようにしてつくられるのか?
解糖系=嫌気性解糖
ブドウ糖が材料、酸素が不要。ビタミン、ミネラルを大量に消費します。ATPの産生は2個産生。
クエン酸回路
ビタミンB1、B2、B3(ナイアシン)、B5(パントテン酸)αリポ酸を消費します。鉄、マグネシウムを消費します。ATPは2個産生。
電子伝達系
酸素が必要、好気性代謝。ビタミンB2、B3(ナイアシン)を消費します。ATPは38個産生脂肪酸が材料となる代謝は効率が良い。脂質が分解されてできるのが脂肪酸。ATPは129個産生
ステップⅠ:糖質を好気性代謝にする。そのために、ビタミンB1、B2、B3(ナイアシン)、B5(パントテン酸)αリポ酸などのビタミンB群、タンパク質を補給します
ステップⅡ:脂肪酸代謝(ケトン体代謝)に変えていく。糖質を減らして脂肪酸を増やします、糖質制限食にします。
メガビタミン①
ATPセット:ATPブースト(激増)サプリメント4点セット。生きるためのエネルギーATPを量産するための補酵素、補因子として有用なビタミン・ミネラル
ATPセット(1日の摂取目安)
鉄:NOWアイアン36mg(キレート鉄)、必要量約100mg
ビタミンB群:B50コンプレックス、必要量100~300mg
ビタミンC:C1000、必要量 3000~9000mg
ビタミンE:E400(d-α-トコフェロール含有)、必要量400~800IU
鉄:不足すると電子伝達系の機能やクエン酸回路機能が低下します
ビタミンB:ビタミンB不足(特にB1不足)ではクエン酸回路機能が低下します
ビタミンC:脂肪酸をミトコンドリアに取り込む際に必要なカルニチンを合成する補酵素として働きます
ビタミンE:酸素、ビタミン、ミネラルがミトコンドリア内に取り込みやすくなる。ビタミンB,ビタミンCの効果を強めます
メガビタミン⓶
メガ量のビタミンが必要な理由:普通の食事(バランスの取れた食事)だけでは質的栄養失調になります。糖質は栄養素ではありません。むしろ「栄養ドロボー」です。体内では糖質を代謝するために必要な主酵素+補酵素(補因子)となるタンパク質、ビタミン、ミネラルを浪費します。栄養素と呼べるのは、タンパク質(必須アミノ酸)、必須脂肪酸、ビタミン、ミネラルです。
人が必要とするビタミンの量は、先天的に決まっています。同じ量のビタミンを摂っていても、それをどれだけ有益に活用できるかどうかは、個体差があるということです。
日露戦争時の歴史エピソードはご存じの方も多いでしょう。日本陸軍では兵士に白米ばかりを食べさせたせいで、ビタミンB1不足を引き起こし大量の脚気患者が出ました。しかし、全員が脚気になったわけではありません。同じものを食べていたにも関わらず、脚気となり死亡した人、脚気となったが死には至らなかった人、脚気にならなかった人がいます。
人はそれぞれ顔や体型は異なりますが、それは遺伝子が異なるからです。遺伝子が異なるということは代謝酵素のカタチ(立体構造)も異なります。エネルギー代謝の時に、代謝酵素と補酵素が結合して、その働きが発揮されます。結合するとき、代謝酵素と補酵素の形が結合しやすい形の場合は効率よく結合し、そうでなければ確率が減少し、代謝も悪化します。この結合する確率のことを「確率的親和力」といいます。
脚気に話を戻しますと、ビタミンB1は、酵母、豚肉、胚芽、豆類に多く含まれています。白米は胚芽を除いたものなのでビタミンB1がなくなります。確率的親和力の高い人は、胚芽がなくても健康であり確率的親和力の低い人は胚芽以外の食物に含まれるビタミンB1だけでは病気になってしまったということです。
確率的親和力を血液検査などで調べることはできませんが、長寿の家系であれば確率的親和力が高いと思われます。一方、糖尿病家系、がん家系の人などでは確率的親和力は低いと思われ、若いうちから積極的に、高タンパク低糖質+鉄+メガビタミンを実践すれば病気を避けることが出来ます。
つまり家系に病気がある人は、先天的に病気のリスクがあるのではなく、先天的にビタミンをメガ量必要とする体質であると捉え直せばよいのです。確率的親和力が高いというのはさほど多くないと考えます。エイブラム・ホッファーによると、ほとんどの女性のビタミンB濃度が低く特にB6、葉酸、ビタミンC濃度が低い。ビタミンEの服用により心血管病変は40%減らすことが出来る。ビタミンC500mg服用により心疾患の死亡率は42%減少、すべての病気による死亡率を35%減少できます。サプリメント服用により、動脈硬化のリスクを高める血中ホモシステイン値を下げ、炎症反応(CRP)を下げ、中性脂肪を下げ、HDLコレステロールを上昇させることが出来ます。
脳においては、ビタミンC、ナイアシン濃度と脳のレセプター機能(脳の働き)との間には大きな相関があるということです。ビタミンがメガ量必要な理由がお判りいただけたでしょうか。
普通の食事を食べていても勉強が得意な子供は相対的に栄養不足が軽いと言えます。一方、普通の食事を食べていても勉強が苦手な子供は、栄養不足が重いと言えます。つまり、勉強が苦手な子供は、プロテイン+サプリメントで栄養補給すれば、成績が上がるということになります。
実際に1年程度継続したお子さんの中にはIQ20程度(偏差値10程度)は簡単に上がった子供もいます。「集中力が向上した」「根気強くなった」「言語理解が深まった」「漢字を覚えるようなった」「数学の成績が急上昇した」などの母親の声を多数いただきました。
では勉強ができる子がプロテイン+サプリメントを併用すると「相対的に栄養不足が軽い→栄養不足が解消する→さらに成績が良くなる」ということになります。偏差値が65から79まで上がった高校生もいます。
3大栄養素(糖質、タンパク質、脂質)について説明します。
糖質:エネルギー源となります。血糖値が上昇すると元気になります。時間がたって血糖値が下降するとお腹がすきます。現代人は食べた糖質のエネルギーを使い切る人は少ないです。昔と違い車など便利になり糖質は余ります。余った糖質はインシュリンと言うホルモンによって脂肪に替えられ体に蓄えられて肥満につながります。脂肪の取り過ぎで太るのではなく糖質の取り過ぎで太るのです。
タンパク質:体(内臓、筋肉、骨、髪、爪など)の構成成分です。必須アミノ酸は必ず摂らなくてはいけません。1番大事な栄養素です。
脂質:体(細胞膜、脳みそなど)の構成成分です。必須脂肪酸は必ず摂らなくてはいけません。エネルギー源でもあります。心臓など内臓は脂質由来のケトン体がエネルギー源です。糖質はすぐに枯渇するので内臓では使われません。遭難して飢餓状態になっても、水だけで1ヶ月生きられるのは脂質があるからです。脂質が全部使われたら、最後にタンパク質が使われます。摂り過ぎた脂質は便として排出されます。