今週のお知らせは「分子栄養学のすすめ」から転載します。
以下引用始め
歳を重ねるにつれ、身体の生理機能は低下していきます。
身体の器官を構成している細胞が老化し、細胞数の減少や細胞の働きが悪くなることによって、機能低下は全身(呼吸機能、循環機能、消化機能、排泄機能、運動機能などの低下)に及びます。加齢による身体機能低下を予防するためには、筋肉量や筋力の維持が不可欠です。また、糖尿病・高血圧・脂質異常症・虚血性心疾患などの発症リスクを増大させる重要な要因としても、筋肉量の減少があげられています。
通常、私たちが食事で摂る糖質の約7〜8割は筋肉で蓄え、エネルギーとして消費されています。しかし、筋肉量が少なくなると糖質は肝臓へ運ばれ、内臓脂肪が蓄積して生活習慣病を発症しやすくなります。さらに、筋肉が減ると免疫機能が低下し、肺炎などにかかる人が多いことも報告されています。
約4,000人の日本人を対象に、年齢による筋肉量の変化を調べた研究によると、筋肉量の減少は25〜30歳頃から始まり、年齢を重ねるにつれて進行していきます。特に大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)の筋肉量が一番落ちやすいと報告されています。
この筋肉は、足を前に出した時に身体を支える役割をしているため、この部分が衰えることで、転倒の原因にもつながります。
老年医学会「日本人筋肉量の加齢による特徴」をもとに作成
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/47/1/47_1_52/_pdf/-char/ja
80歳、90歳でも手遅れということはありません。平均年齢80歳を超える被験者を用いた実験でも筋肉が肥大したという報告が挙げられています。
普段からウォーキングや散歩を心がけている方も多いと思いますが、歩行動作のみでは、下半身の筋力を維持・向上させるには十分ではないと言われています。
自宅でも手軽に足腰を強化できる運動として、バランスボール運動、自転車こぎ、スクワット、かかとの上下運動などがおすすめです。特にスクワットは下半身の筋肉(腰、太もも、お尻、ふくらはぎ)を総動員するため、基礎代謝量が上がり、体力の低下を防ぎます。また、スクワットの姿勢を一定時間保つことで、アイソメトリックトレーニングに繋がります。
※アイソメトリックについては、三石巌著「医学常識はウソだらけ」をご覧ください。
筋肉はタンパク質でできており、合成と分解が常に繰り返されていますので、筋肉の合成を促す対策は欠かせません。
・筋肉の合成を促す栄養素
良質タンパク、ビタミンA、B群、C、D、E、ミネラル(カルシウム・マグネシウム・亜鉛など)
・良質タンパク
筋肉の主原料である良質タンパク(不可欠アミノ酸)の摂取が必要不可欠です。タンパク質の摂取不足は、骨格筋の合成低下をまねき、骨格筋の筋肉量減少の要因となります。
タンパク質の合成能の低下は、加齢によって生じやすくなります。高齢女性24,417名を3年間追跡した研究では、タンパク質の摂取量が多いほどフレイルの発症リスクが低かったことが報告されています。※フレイルとは・・・加齢によって心身が衰え、社会とのつながりが減少した状態のこと。
◎タンパク質の働きについては、こちらをご覧ください。
カラダとタンパク質 | 分子栄養学のススメ (ameblo.jp)
・ビタミンA
細胞分裂を調節していることから細胞合成に重要な栄養素です。成長ホルモンの合成にも関与しています。
・ビタミンB群
糖質、脂質、タンパク質のエネルギー代謝過程に欠かせない栄養素です。ビタミンB群はどれか一つだけでは効果を発揮しにくく、お互い協力しあいながら働きます。
・ビタミンC
ビタミンCが不足すると、骨格筋の萎縮や身体能力の低下をもたらすことが明らかになっています。
◎ビタミンCについては、こちらをご覧ください。
どれくらい摂取すればいいの?個体差が大きいビタミンC | 分子栄養学のススメ (ameblo.jp)
・ビタミンD
筋肉組織にレセプターを持っていることから、筋肉合成に重要な働きを担っており、筋肉増強ビタミンなどといわれています。血中ビタミンD濃度が低いと、フレイルになるリスクが高まると言われています。ビタミンD低値の高齢者を対象とした介入試験では、転倒、筋力増強にビタミンDによる効果が認められています。
・ビタミンE
高い抗酸化作用を発揮し、筋肉組織の機能維持を担っています。動物実験等でビタミンEを欠乏させると栄養性の筋ジストロフィーがみられることからも重要な役割を担っていることが分かります。
・カルシウム・マグネシウム
筋肉の収縮拡張の働きをサポートし、正常な動きを担っています。
・亜鉛
骨、筋肉、肝臓、腎臓など全身に分布しており、細胞が新しく作り替えられるときに必要不可欠で、タンパク質合成にも欠かせません。筋肉を合成するホルモン(テストステロン、成長ホルモン、インスリン)の分泌にも関与しています。
◎亜鉛についてはこちらをご覧ください。
新型コロナウイルスの味覚障害で注目される” 亜鉛の重要な役割” | 分子栄養学のススメ (ameblo.jp)
<参考図書>
医学常識はウソだらけ 実践対策編 分子栄養学が教える正しい食事と運動 (祥伝社黄金文庫)
以上引用終わり