ミラクルデンチャーについて話が聞きたいとの主訴で来院されました。
他院にて左下5番(前から5本目、第2小臼歯)の歯根周囲の歯槽骨が炎症を起こして溶けているので抜いてインプラントにしたらどうですか、と勧められたそうです。家族から、抜いた後にミラクルデンチャーにする方法もあるよ、と教えられ説明を希望してこられました。
診察してみると全体的にきれいな状態でむし歯はなく1歯が治療済みで、左下5番は根管治療の途中で放置してありました。
レントゲン検査では確かに歯根周囲に陰影がありました。しかし根管治療をすれば直ると思われましたので、患者さんには詳しく説明して、第1選択として、歯は抜かないで根管治療をすることになりました。
(根管治療とは、歯の中心にある歯髄=神経が細菌感染した場合、根管を消毒して、症状が無くなったら根管を防腐剤で緊密に充填すること)
患者さんは抜くものだとばかり思っていたため大変喜んでくださいました。
全体のレントゲンを見ると虫歯はありません。にもかかわらず、右下5番が根管治療してあります。左下5番は根管治療が済んでおらず根管先端の周囲に影があり歯槽骨が少し溶けています。これは中心結節と言う突起が折れて神経が死んだものと思われます。下顎左右5番が中心結節だったと思われます。
中心結節―青い矢印の部分が中心結節で、硬いものを噛んだ時などに折れてしまうことがあります。この突起には歯髄(いわゆる神経)が伸びていて、折れると神経が露出して細菌感染を起こし、患者さんが分からないうちに炎症を起こすのです。
右の写真は根管治療途中で放置してあった状態。このような歯を見つけた場合には、突起の周りを白いプラスティックで覆い富士山のような形にすれば、折れるのを防ぐことが出来ます。
1回目の根管治療後のレントゲン
根管治療は軟化した歯質を削り取ります。薬剤で殺菌し、症状が治まったら防腐剤で根管を緊密に充填するものです。
2回目根管充填後のレントゲン
根管充填が済んで、冠を作るため歯の形を整えて歯型を取ります。歯髄を取った歯は、木に例えると枯れ木です。詰めるだけでは折れたりヒビが入ったりする事が多くなるので、割れ難くするため冠をかぶせます。
白い冠を被せてひとまず終了しました。歯を抜いてインプラントにすることなく治療が終わったので、患者さんには大変喜ばれました。